自身のエンベロープ蛋白質の代わりに、他のウイルスのエンベロープ蛋白質や特定の蛋白質を表面に一過的に発現させたウイルスのこと。ウイルスに関する分子生物学的な研究や、中和抗体の測定、医薬品などの研究開発などで幅広く利用される。シュードは「偽の」という意味であり、偽型ウイルスとも呼ばれる。

 シュードタイプウイルスを利用するメリットは大きく2つある。1つ目は、施設数が限られ、管理が厳重なバイオセーフティーレベル(BSL)3や、BSL4の施設でしか取り扱えない危険性の高いウイルスに関して、BSL2の施設でも、ある程度解析できる点だ。また2つ目は、培養細胞でうまく増殖しないウイルスを、シュードタイプウイルスで代替することで細胞への侵入機構などを効率的に解析できる点だ。

 例えば過去には、感染した際の致死率が高く、BSL4の施設で取り扱う必要があるエボラウイルスの糖蛋白質を発現させた水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベースのシュードタイプウイルスが作製され、BSL2の施設でエボラウイルスの研究に使用された。